宗教法人 犬の良さ

司法試験、予備試験、ロー入試の過去問解答案

東北大ロー 2021年刑法 答案構成メモ

2021年東北大ローの刑法問題の答案構成のメモのみ投下。

答案作成前に下書きとして書いたが、後で見返したい為備忘を兼ねて投稿

 

1 Xに傷害致死罪の教唆犯が成立する。

(1)Xは、Yに小型のナイフを持たせA付近へYを向かわせた。Xはこの時点で、Yが喧嘩の過程でVをナイフで刺すことを予想している。

(2)上記ナイフは小型であり、Vが死亡することはないと軽信していた。

(3)本件行為はXが同行を渋るYを強く説得した結果生じたものである。

(4)本件において、Xはナイフが小型であることからVが死亡することは無いと軽信しているが、結果的にVは死亡している。傷害致死罪は暴行罪、傷害罪の結果的加重犯であり、重い罪の故意を必要としない。

2 上記より、Xに傷害致死罪の教唆犯が成立する。

3 もっとも、本件行為はVによる侮辱的な言葉に対して憤激した結果生じた行為であるが、違法性、責任阻却の事由とはならない。

 

4 Yに傷害致死罪が成立する。

(1)YはVを殺害することになってもやむを得ないと考え、Xより渡された小型ナイフをVの胸部に数回強く突き刺している。

(2)小型のナイフとはいえ、胸部を強く数回突き刺すという行為は生命活動の維持を困難とする危険性が非常に大きいといえる。

5 上記よりYに傷害致死罪が成立する。

6 Yに正当防衛が成立する余地はないだろうか

(1)本件において、YはVに進んで暴行を加える意思はなかったものの、Xと間違えられ、Vから暴行を受けている。暴行の程度は腹部を強く蹴られるなど非常に強いものであり、Xの加勢も入らない状況であった。

(2)本件状況を正当防衛の要件に当てはめて考えると、①急迫不正の侵害は存在しており、②自分または他人の生命・権利を防衛する為は充足する。

(3)しかし、Vの殴る蹴るの暴行に対して、胸部にナイフを強く数回突き刺同人を死亡させたという行為は③やむを得ずした行為とはいえない。

7 Yに過剰防衛が成立する。

(1)正当防衛の要件のうち、過剰な防衛行為によって、やむを得ずした行為に該当しない場合は、過剰防衛が成立する余地がある。

 

8 よって、Xに傷害致死罪の教唆犯が、Yに傷害致死罪が成立する。

刑法上の「罪数」について

移動中に刑法の条文を素読してたら罪数のあたりについてまとめたくなったので備忘録も兼ねて更新

観念的競合(54条1項前段)→1つの行為が2つの構成要件に該当している場合。

e.g.警察官を殴った場合、傷害罪と公務執行妨害の二つが成立し、重い刑が軽い刑に吸収される。

 

 

牽連犯(54条1項後段)→犯行の手段または結果である行為が他の罪名に触れること。

住居侵入と窃盗・強盗・殺人・強制性交・傷害・放火、文書偽造とその行使・詐欺との間に認められている。

e.g.他人の住居に侵入し、他人の財物を窃取した場合。

この場合、住居侵入と窃盗罪は牽連犯となり、重い方の刑により処断される。

 

併合罪(45条)→確定判決を経ていない2個以上の罪が存在する場合。

e.g.人を殴った次の日に他人を財物を窃取した場合。

この場合、暴行罪と窃盗罪し、重い方の刑を1.5倍したものを長期としている。

(この場合、暴行罪は2年以下の懲役、窃盗罪は10年以下の懲役の為、重い方である10年を1.5倍した15年以下の懲役が科される。)

 

包括一罪→複数の犯罪行為を一つに包括すること。

①同じ数個の罪を吸収して一罪とする場合

e.g.一人の被害者を立て続けに2回殴った場合。

この場合、(1)時間的な接着性、(2)法益侵害の同種性が認められるため、2個の暴行罪ではなく1個の暴行罪が成立する。

※二人を立て続けに殴った場合は包括的一罪ではなく、併合罪となる。

②軽い罪が重い罪に吸収される場合。

e.g.窃盗後に暴行を加えて財物を強取した場合、窃盗罪は吸収され強盗罪が成立する。

e.g.包丁を人を殺した際に、衣服が破れた場合、器物損壊罪は殺人罪に吸収される。

この場合は、当然吸収後の重い罪が科される。

 

 

以上。刑法総論、仕組みを理解してくる結構面白いなって感じてます。

H30司法試験論文過去問 刑事系科目

第1 設問1

乙がPTA役員会において「二年生の数学を担当する教員がうちの子を殴った」と発言した行為について、名誉毀損罪が成立する。

 

(1)PTA役員会には乙を含む保護者4名とA高校の校長の5名しかいなかったが、「公然」にあたる。

ア 「公然」とは、不特定または多数者をいう。もっとも、名誉毀損罪の保護法益は外部的名誉であるところ、少数者から不特定多数者に伝播する具体的危険性があり、不特定多数者に伝播しようとした場合には、なお「公然」にあたると考える。

 

イ 本件において、数学を担当する教員が生徒甲を殴ったとの発言であり、A高校の校長としてはかかる事実を確認しなくてはならない責務がある。事実確認のため、乙の発言についてA高校の他の教員に調査する具体的危険性があったと言える。そして、実際に校長が教員に聞き取り調査を行なったことによってA高校の25名全員に丙が甲に暴力を振るったとの噂が広まっている。合計30名に広まっていることから、これは多数名と言える。

 

ウ したがって、本件の場合は「公然」にあたる。

 

(2)乙は「2年制の数学を担当する教員」と人物を特定してはいないが、なお、「事実を摘示」したと言える。

ア 「事実を摘示」とは、特定人の社会的評価を低下させるに足りる具体的事実の摘示をいう。

イ 本件では、乙は「2年生の数学を担当する教員」と人を特定してはいないとも思える。しかし、A高校において2年生の数学を担当している教員は丙しかおらず、かかる発言から容易に丙であることが特定可能であるといえ、なお特定人に対する事実の摘示にあたる。また、うちの子を殴ったという具体的事実は、現代の教員にとっては由々しき事態であり、社会的非難の対象となり得るものであるから、丙の社会的評価を低下させるに足りる。

 

ウ したがって、「事実の摘示」にあたる。

(3)名誉毀損罪は具体的危険犯であり、現実に丙の名誉が侵害されることは必要ない。

(4)よって、乙の上記行為に名誉毀損罪が成立する。

法律概念の翻訳の難しさについて

山口先生の青本の通読が終わり、刑法総論について理解の足りていない部分の補強を行っている中で、面白い論文を見つけたので紹介。

法律について詳しく知らずとも理解できる内容だし、15分程度で読み切れる量なので時間のある方は是非。

 

https://hermes-ir.lib.hit-u.ac.jp/hermes/ir/re/10474/ronso1240400310.pdf

 

一橋大学の青木先生の論文、明治維新直後に、法典確立の為にフランス法を翻訳した際のエピソードを紹介し、法律用語の翻訳の難解さについて記載している。

 

R1一橋ロー過去問 憲法

小問1

1 Xらは本件のY市の処分に対し、憲法21条1項に反し、集会の自由を侵害していると主張する。

 

2 集会の自由とは、多数認が政治・経済・学問・宗教などの問題に対して共通の目的をもって一定の場所に集まる自由をいう(芦辺憲法7版222頁)
Xらの行った「軍事パレード反対」をスローガンとした集会は、パレードの反対を目的として一定の場所に集まっているため、集会にあたる。
したがって、上記自由は憲法21条1項によって保障される。

 

3 Xらの上記自由は不許可処分により制約されている。

(1)市民会館は公の施設にあたり、管理者は正当な理由なくその利用を拒んではならないとされており、正当な理由なくその利用を拒んだ場合は憲法上の集会の自由を制限することとなる。(泉佐野市民会館事件)

(2)本件において、Xらの利用しようとしていたY市庁舎前広場は、池や噴水が設置され、ベンチなども置かれており、市民の憩いの場となっているうえ、観光客の通行や待ち合わせにも多く利用されている。これらの実態をかんがみれば、Y市庁舎前広場は地方自治法上公の施設にあたると考えられる。

(3)したがって、Xらの上記自由は制約されているといえる。

 

4 上記制約は正当化されない。

(1)まず、上記自由は特定の政治的立場の表明を目的としたものであり、かかる自由の重要性は極めて高い。そして、昨年の政治的行為としての「平和と人権を護ろう」という集会が許可されたのに対し、今年の集会が許されなかったことからすると、上記自由の制約はY市の主催するパレードに対する反対運動という表現内容に着目した規制であるといえる。
そこで、本件集会の制約が許されるのは、社会に対する危険が現在かつ明白に迫っている場合に限られると考える。

(2)本件において、Y市はXらの集会が「政治的行為」にあたり、かつ「示威行為」にあたることを理由に不許可処分を行っている。本件集会を原因として社会に対する危険が現在かつ明白に迫っているといえるような事情は存在しない。

(3)したがって、Y市の本件処分は憲法21条1項に反する。

 以上。

 

問題を見た際に頭に浮かぶべきこと

・集会の自由が問題になるということ(パレードやデモ行進も集会にあたる)

・集会の自由とは、多数認が政治・経済・学問・宗教などの問題に対して共通の目的をもって一定の場所に集まる自由をいうということ

地方自治法上の公の施設は正当な理由なく住民を利用を拒んではならないということ

(ただし、設備や予約の都合上使用できない場合はその限りではない。)

・社会に対する危険が現在かつ明白に迫っている場合は制約できる

 

 

 

H30京大ロー過去問 憲法

1 監視カメラによるC本部入口付近の撮影について

(1)みだりにその容ぼう・姿態を撮影されない権利は個人の私生活上の自由として憲法13条で保障されている。(京都府学連事件)

(2)上記行為はかかる自由を制約しているといえる

(3)上記制約は正当化されるだろうか。

 

ア 本件の情報収集行為において、公共の福祉の為必要のある場合に相当の制限を受けることは憲法13条の趣旨において明らかである。そこで、①当該手段の目的が正当で、②手段が相当性を有する場合、正当化されると考える。

 

イ 本件で監視カメラの設置されたB地区は日雇い労働者や路上生活者が多く住んでおり、観光客から怖い思いをしたという声が多く寄せられていた。そこでA地区は正確な現状把握の為監視カメラを設置した。設置の効果として犯罪等の発生の確認、抑制に繋がるため、公益上の目的として正当性を有する(①充足)。また、本件で設置された監視カメラは問題となっている地区に限定して設置されていること、画像の保存期間が2週間と限定されており、不適切利用に関する配慮がされている。とはいえ不適切利用の可能性が全くないとは直ちに言えず、Xのプライバシーが全く侵害されていないとは言えないが、現状把握の為にはやむを得ないため、手段は相当性を有するさ(②充足)。

ウ したがって、上記行為は憲法13条の趣旨に反しないと考える。

(4)よって、監視カメラによるC本部の撮影は合憲である。

 

2 Dへの情報提供によりⅩの上記自由は侵害され憲法13条に反しないか。

(1)まず、Xの上記自由がDへの情報提供により侵害されることは明らかである。

(2)それでは上記制約は正当化されるだろうか。

 

ア 人の容ぼうについては終生不変である点で指紋と異なるところはない。その利用法次第で個人の私生活・プライバシーが侵害される危険性があることは明らかである(指紋押捺拒否事件)。もっとも、容ぼう等の情報は秘匿性が高いものとは言えず、慎重な取り扱いがなされれば憲法13条に違反しないといえる。

 

イ 本件では、現状把握の為に収集されたいた情報をDがXがどのような人物であるかを把握するために用いられており、目的外利用であるといえる。また、Dが立腹したという理由でXに対する情報を収集した。以上を踏まえると、本件情報提供は慎重な取り扱いとは言えないと考える。

 

ウ したがって、上記行為は憲法13条の趣旨に反すると考える。

 

(3)よって、本件情報提供は憲法13条に反し、違憲である。

以上。

 

問題を見た際に頭に浮かぶべきこと

・容ぼう・姿態をみだりに撮影されない権利は保障されている

京都府学連事件

・手段の目的が正当であり、相当性があること

・容ぼう等の情報は終生不変である点指紋と変わらない点

指紋押捺拒否事件

・容ぼう等の情報は秘匿性が高いものではないということ